衆議院議員定数不均衡訴訟

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衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭和51・4・14)

:要約p.238、百選Ⅱ(第5版)161事件p.336、百選Ⅱ(第6版)153事件p.326 、野坂第7章p.103、伊藤75事件p.525

 

1972年に行われた衆議院議員選挙においては、議員1人当たりの有権者数の最大較差が4.99対1となっており、原告の在住する千葉1区と最小の選挙区との間の較差も4.81対1となっていたため、千葉県選挙管理委員会を相手取って選挙無効訴訟を提起した事件。

 

争点 議員定数の不均衡は、いかなる場合に憲法14条に違反するか

結論 較差が平等の要求に反し、かつ、合理的期間を経過した場合

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「憲法14条に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向するものであり、右15条1項等の各規定の文言上は単に選挙人資格における差別の禁止が定められているにすぎないけれども、単にそれだけにとどまらず、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである」

 

「投票価値の平等は、常にその絶対的な形における実現を必要とするものではないけれども、国会がその裁量によって決定した具体的な選挙制度において現実に投票価値に不平等の結果が生じている場合には、それは、国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的ないしは理由に基づく結果として合理的に是認することができるものでなければならない」

 

「具体的に決定された選挙区割と議員定数の配分の下における選挙人の投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきものであり、このような不平等を正当化する特段の理由が示されない限り、憲法違反と判断するほかはない」

 

「一般に、制定当時憲法に適合していた法律が、その後における事情の変化により、その合憲性の要件を欠くに至ったときは、原則として憲法違反の瑕疵を帯びることになるというべきであるが、・・・前記のような人口の異動は不断に生じ、したがって選挙区における人口数と議員定数との比率も絶えず変動するのに対し、選挙区割と議員定数の配分を頻繁に変更することは、必ずしも実際的ではなく、また、相当でもないことを考えると、右事情によって具体的な比率の偏差が選挙権の平等の要求に反する程度となったとしても、これによって直ちに当該議員定数配分規定を憲法違反とすべきものではなく、人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に初めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。」

 

「選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら・・・複雑、微妙な考慮の下で決定されるのであって、一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべき」

 

「憲法に違反する法律は、原則としては当初から無効であり、また、これに基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであるが、しかし、これは、このように解することが、通常は憲法に違反する結果を防止し、又はこれを是正するために最も適切であることによるのであって、右のような解釈によることが、必ずしも憲法違反の結果の防止又は是正に特に資するところがなく、かえって憲法上その他の関係において極めて不当な結果を生ずる場合には、むしろ右の解釈を貫くことがかえって憲法の所期するところに反することとなるのであり、このような場合には、おのずから別個の、総合的な視野に立つ合理的な解釈を施さざるをえない」

 

※ 本判決は、覚えるべきフレーズのオンパレードです。上記のフレーズは全て判決の理屈の流れの中で押さえるべきフレーズですので、原文(あるいは、せめて野坂泰司「憲法基本判例を読み直す」の該当部分であるp.103以下)にあたる事を強くおススメします。