勾留の基礎となっていない被疑事実の無罪判決と刑事補償

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勾留の基礎となっていない被疑事実の無罪判決と刑事補償(最大決昭和31・12・24)

:要約記載なし、百選Ⅱ(第5版)140事件p.294、百選Ⅱ(第6版)134事件p.288

 

覚せい剤取締法違反容疑の事実Aで逮捕・勾留されたが、不起訴となった。この事実Aを理由とする逮捕・勾留中に取調べられた事実Bについて、別途起訴されたが、無罪が確定した。そこで、原告は、無罪となったBの公訴事実が、不起訴処分となったAの事件の勾留中に取り調べた事実を内容としているとして、刑事補償を請求した事件。

 

争点 憲法40条にいう「抑留又は拘禁」は、不起訴となった場合の抑留等も包含しうるか

結論 包含しうる

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「憲法40条は、『何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる』と規定しているから、抑留または拘禁された被疑事実が不起訴となった場合は同条の補償の問題を生じないことは明らかである」

 

「憲法40条にいう『抑留又は拘禁』中には、無罪となった公訴事実に基づく抑留又は拘禁はもとより、たとえ不起訴となった事実に基づく抑留または拘禁であっても、そのうちに実質上は、無罪となった事実についての抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、その部分の抑留及び拘禁もまたこれを包含する

 

※ 頭の体操ですね。本判決の論理からすれば、本件のように、事実AとBが類似し(両方覚せい剤取締法違反の被疑事実)、Aの被疑事実に基づく逮捕・勾留のみなされた後、それを基礎にA・Bが各々起訴が検討された場合を前提とすると、

仮に、

A不起訴+B不起訴であれば、「無罪の裁判」が存在しないため、憲法40条不適用

A不起訴+B無罪であれば、本判決の事例と同じで、「(Bの)無罪の裁判」と、「(手続としてはAを理由とした抑留または拘禁の中で、実質上Bについての抑留又は拘禁と認められる部分があればその)抑留または拘禁」の存在から、憲法40条適用される可能性あり

A無罪+B不起訴であれば、「(Aの)無罪の裁判」と、「(Aを理由とする)抑留又は拘禁」の存在から、何の問題もなく憲法40条適用

A無罪+B無罪であれば、「(Aの)無罪の裁判」と、「(Aを理由とする)抑留又は拘禁」の存在から、何の問題もなく憲法40条適用される上、本判決を援用すれば、Bについても憲法40条適用認められる可能性あり

・・・という事になります。ポイントは、憲法40条の文言の「抑留または拘禁」と、「無罪の裁判」とを要件として一度分けて考えることです。