朝日訴訟

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朝日訴訟(最大判昭和42・5・24)

:要約p.184、百選Ⅱ(第5版)142事件p.298、百選Ⅱ(第6版)136事件p.292、伊藤66事件p.457

 

原告は肺結核のため療養所に入所し、単身でかつ無収入のため医療扶助及び生活扶助を受けていたところ、連絡の取れた実兄から月額1500円の仕送りを受けることとなった。しかし、市の社会福祉事務所長は、1500円のうち600円を日用品費に充当させる事として、生活扶助を廃止し、残額900円によって医療費の一部を負担させる事として、医療扶助の減額を行う旨の保護変更決定をした。これに対し、原告が決定取消を求めて出訴した事件。

 

争点 生活保護受給権は、一身専属の権利であるか

結論 一身専属権である

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「この権利(=生活保護受給権)は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ないし、相続の対象ともなり得ない」

 

・・・このように述べて、上告後、最高裁判決が出るまでに原告が死亡したため、原告の相続人が訴訟を引き継げるが争われた点について判示しました。その上で、傍論として以下のように述べています。

 

「憲法25条1項・・・の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられている

 

「健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であり、その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより、多数の不確定的要素を綜合考慮してはじめて決定できるものである。したがって、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない」