「君が代」起立・斉唱の職務命令と思想・良心の自由

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「君が代」起立・斉唱の職務命令と思想・良心の自由(最判平成23・5・30)

:要約記載なし、百選(第5版)掲載なし、百選Ⅰ(第6版)40事件p.85

 

東京都立の高校教諭であった原告が、卒業式における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を命ずる校長の職務命令に従わなかった。これに対し、東京都教育委員会は、戒告処分とし、さらにその後、定年退職に先立ち申し込んだ非常勤の嘱託職員の選考において、上記職務命令違反等を理由に不合格とされたため、東京都に対し、国家賠償請求訴訟、再雇用拒否処分取消等を求めて出訴した事件。

 

争点 国歌斉唱時に、起立斉唱する行為は、特定の思想を外部に表明する行為といえるか

結論 そのように評価することは困難である

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「本件職務命令当時、公立高等学校における卒業式等の式典において、国旗としての『日の丸』の掲揚及び国歌としての『君が代』の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって、学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は、一般的、客観的に見て、これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、かつ、そのような所作として外部からも認識される・・・したがって、・・・上記の起立斉唱行為は、その外部からの認識という点から見ても、特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり、職務上の命令に従ってこのような行為が行なわれる場合には、上記のように評価することは一層困難である」

 

・・・と、君が代ピアノ伴奏職務命令拒否事件(最判平成19・2・27)における理由づけとほぼ同様の理由づけにより、国歌斉唱時における起立斉唱行為が特定の思想の有無についての告白の強制にあたらない事を論証しています。

もっとも、上記判例とは異なり、「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い」と認定した上で、「その制限が必要かつ合理的なものである場合には、その制限を介して生ずる上記の間接的な制約も許容され得る」という基準を立て、より思想及び良心の自由に配慮した形で検討しています。結論としては、本件職務命令は、憲法19条に違反するとはいえない、とされました。