神戸市立高専事件

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神戸市立高専事件(最判平成8・3・8)

:要約p.74、百選Ⅰ(第5版)46事件p.94、百選Ⅰ(第6版)45事件p.96 、小山27事件p.210、伊藤23事件p.160

 

神戸市立工業高等専門学校1年であった原告は、エホバの証人の絶対平和主義の教義に基づき、必修科目の体育の剣道実技に参加しなかった。また、代替措置も全くなされなかったため、原告は原級留置処分を受け、次年度は2回連続の原級留置を根拠とする退学処分を受けた。そこで、原告が、退学処分等の取消しを求めて出訴した事件。

 

争点 代替措置が可能であるのに、全く講じることなく退学処分を課す行為は、校長の裁量権の範囲を逸脱するか

結論 逸脱する

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべき」

 

「校長の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をした」

 

・・・という形で、原則的に原級留置処分又は退学処分を行うか否かの判断は、校長の教育的裁量事項であるため、裁量権の逸脱・濫用の審査(但し、裁量過程統制型の審査)を行い、原級留置処分・退学処分の学生に与える不利益の大きさ、レポート等の代替措置が可能であった事等を理由として、裁量権の濫用・逸脱があったものと認定されています。

 

※ 本事例の特殊なところは、代替措置を採らずに原級留置処分を行うことは、原告の間接的に信教の自由の侵害となりうるのですが、代替措置を採った場合は採った場合で、特定の宗教を援助するものとして20条3項違反となる可能性があるという点です。この後者の点について、本判決は、目的効果基準を適用し、「およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法20条3項に違反するということができない」としています。

 

※ 本判例を思想及び良心の自由関連として取り扱ったのは、「思想(信仰)に反する行為強制」の問題(例えば、後に取り扱う二つの君が代関連訴訟)におけるリーディングケースとなり得るものだからです。