三菱樹脂事件

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三菱樹脂事件(最大判昭和48・12・12)

:要約p.70、百選Ⅰ(第5版)12事件p.26、百選Ⅰ(第6版)10事件p.24 、野坂第5章p.65、小山4事件p.26、伊藤6事件p.43

 

三菱樹脂株式会社の採用試験の際、原告は学生運動等の活動を秘匿する虚偽の申告をしていたところ、これを理由として3ヶ月の試用期間終了直前に本採用を拒否するという告知を受けたため、原告が労働契約関係存在の確認を求めて出訴した事件。

 

争点 憲法19条は、私人間(私企業と被用者)においても適用されるか

結論 直接適用されることはない

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「(憲法19条・14条は)その他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。」

 

「(私的関係において個人の自由・平等の侵害のおそれがある場合には、)これに対する立法措置によってその是正を図ることが可能であるし、また、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する」

 

・・・最初のブロックが、直接適用を否定していることは明らかですね。次のブロックは、私的自治に対する一般的制限規定を適切に運用することで自由や平等を確保する途もある、と言っているにすぎませんので、間接適用説を最高裁が採用したと断言するのは早計です。高橋和之教授の無適用説(=実定法化された権利と理念としての人権を区別すべきという前提から、憲法上の実定法化された人権ではなく、理念としての人権が公序良俗を形成するという考え方)も有力で、この見解からも本判決の判示内容を自説に沿った形で矛盾なく説明できるからです。