ノンフィクション「逆転」事件

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ノンフィクション「逆転」事件(最判平成6・2・8)

:要約p.28、百選Ⅰ(第5版)68事件p.138、百選Ⅰ(第6版)66事件p.140、伊藤33事件p.233

 

アメリカ統治下の沖縄で行われた裁判の陪審員であった作家は、占領下での裁判の不当性を訴える事等を目的として、原告の無罪を確信し、原告の実名を載せた小説「逆転」を著作・出版したところ、原告は前科が知られたことによる損害賠償を求めて出訴した事件。

 

 

争点 一度実名報道された事件であっても、前科等をみだりに公開されない利益はなお法律上保護に値するか

結論 法律上保護に値する場合がある

 

 

【覚えるべきフレーズ】

 

「ある者が刑事事件につき被疑者とされ、さらには被告人として公訴を提起されて判決を受け、とりわけ有罪判決を受け、服役したという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であるから、その者は、みだりに右の前科等にかかわる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有する

「この理は、右の前科等にかかわる事実の公表が公的機関によるものであっても、私人又は私的団体によるものであっても変わるものではない。そして、その者が有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更正を妨げられない利益を有する

 

「前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない」