憲法前文の大きな視点からの解説

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「前文」というものの位置づけについて、少し説明しておきましょう。
「前文(preamble)」には、憲法や法律を制定した由来や目的などが記載される事が多く、日本国憲法前文もそうなっています。
そして、このような「前文」は、本文条項の解釈指針・基準となることは、その性質から言って疑いようもありません。

もっとも、「前文」は、具体的な局面を規律することを想定していませんので、大雑把な表現になっています。

つまり、「裁判規範」(=具体的な紛争解決局面において働くルール)として機能させるには、明確性が足りません。これが、後に出てくる平和的生存権を考える上で、原則となる考え方ですので、押さえておいてください。

さて、日本国憲法前文は、大きく分けると3つの要素から構成されています。

 

(1)制定の趣旨

前文第一段落第一文の「日本国民は、・・・わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」という部分は、凄惨な戦争被害から立ち上がった国民が、自由と平和を基調とした根本法を制定しようとしたという憲法制定の趣旨を明確に表しています。

 

(2)基本的立場

前文第一段落第二文の「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」という部分は、憲法が自然法の理論及び代表民主制に立脚する事を示しています。

また、前文第二段落第一文の「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」、前文第四段落の「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」という部分から、憲法が理想主義を貫こうとしていることが読み取れます。

 

(3)基本原理

 そして、これは皆さん知っておられるように、前文は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の原理が示されているのです。どのような形で示されているのか、次に詳しく見ていくことにしましょう。

 

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