憲法訴訟関係の定義集

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【憲法訴訟】

 

憲法保障制度 憲法の崩壊を招く政治の動きを事前に防止し、または事後に是正するための装置 芦部(第6版)374頁
抵抗権 国家権力が人間の尊厳を侵す重大な不法を行った場合に、国民が自らの権利・自由を守り人間の尊厳を確保するため、他に合法的な救済手段が不可能となったとき、実定法上の義務を拒否する抵抗行為 芦部(第6版)375頁
国家緊急権 戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限 芦部(第6版)376頁
憲法変遷(狭義) 憲法の規範に違反する現実(憲法現実)が生じ、国民に支持されている事態を事実の記述として指す言葉。自衛隊が念頭に置かれている。 読本(初版)341頁
憲法変遷(広義) 憲法の規範に違反する現実が生じ、国民に支持されている事態を受け、憲法規範が改正されたのと同じ法的効果が生じたものとして主張する場合を指す。この意味での憲法変遷は、憲法の規範性を重視して否定する学説が多数である。 読本(初版)342頁
☆☆ 付随的違憲審査制 通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として事件の解決に必要な限度で、適用法条の違憲審査を行う方式 芦部(第6版)379頁、読本(初版)313頁
抽象的違憲審査制 特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な争訟と関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式 芦部(第6版)379頁、読本(初版)313頁
☆☆ 司法事実(判決事実) 「誰が、誰に対して、何を、いつ、どこで、いかに行ったか」という、当該事件に関する具体的事実 芦部(第6版)383頁、読本(初版)321頁
☆☆ 立法事実 違憲か合憲かが争われる法律の立法目的および立法目的を達成する手段(規制手段)の合理性を裏付け支える社会的・経済的・文化的な一般事実 芦部(第6版)383頁、読本(初版)321頁
☆☆ 文面判断(文面審査) 立法事実をとくに検出し論証せず、法律の文面を検討するだけで結論を導き出す審査をいう。(法令の合憲性を一般的に判断・審査すること、を指す場合もある) 芦部(第6版)383頁
「文面上無効」判決 「いかなる人に対し、いかなる事情において適用されても、必ず違憲の結果を生ずるだろう」という趣旨の判決。(法令違憲判決、を指す場合もある) 芦部(第6版)383頁
☆☆ 立法不作為と違法評価(違憲審査) 国会議員の立法行為(立法不作為を含む)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国賠法上の違法の評価を受けない(在宅投票制廃止事件判決) 芦部(第6版)385頁
司法積極主義 法令の合憲性審査に積極的に立ち入ることを求めるのみならず、審査に立ち入った後、法令の合憲性を入念にチェックするよう要請する立場。 読本(初版)327頁
司法消極主義 法令の合憲性審査に立ち入ることをなるべく回避するのみならず、合憲性審査に立ち入った後も、立法府の裁量的判断を尊重して緩やかな司法審査基準をあてはめることを求める立場。 読本(初版)327頁
☆☆ 憲法判断回避の準則 憲法判断は事件の解決にとって必要な場合以外は行わないという「必要性の原則」に基づいて準則化された一連のルール。この中でもとりわけ重要なのは、「裁判所は憲法問題が記録上適切に提起されていても、もし事件を処理することが出来る他の理由が存在する場合には、その憲法問題には判断を下さない」というルールと、「議会の法律の効力が問題になった場合は、合憲性について重大な疑いが提起されても、裁判所が憲法問題を避けることが出来るような法律の解釈が可能かどうかを最初に確かめることは基本的な原則である」というルール。 芦部(第6版)381頁、読本(初版)315頁
第三者の憲法上の権利の援用の可否(有力説) 権利侵害による憲法上の争点提示を最も良くなしうるのは権利主体であるため、当事者は原則として自己の憲法上の権利を援用しうるにとどまり、第三者の権利を援用することは許されない。ただし、①当事者の訴訟における利益の程度、②援用される憲法上の権利の性質、③援用者と第三者との関係、④第三者が独立に自己の憲法上の権利侵害を主張する実際的可能性などを考慮して、第三者の憲法上の権利の援用が例外的に許される場合もある。 読本(初版)318頁
☆☆ 第三者の憲法上の権利の援用の可否(判例) 「没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝されるなど、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求める事が出来る」(第三者所有物没収事件判決)。最高裁は、具体的事件を前提としつつも、事案に関連する憲法問題を一般的に審査しており、違憲主張の適格を限定的に考えない立場である、と評されている。 読本(初版)319頁
☆☆ 合憲限定解釈 「法律の違憲判断を回避する」解釈。すなわち、字義どおりに解釈すれば、違憲になるかも知れない広汎な法文の意味を限定し、違憲となる可能性を排除することによって、法令の効力を救済する解釈 芦部(第6版)382頁、読本(初版)140・319頁
☆☆ 法令違憲 法令そのものを違憲とする違憲判断の方法 芦部(第6版)387頁、読本(初版)322頁
☆☆ 法令違憲判決の効力(個別的効力説、判例・通説) 当該法令が違憲無効という判断の効力は、当該事案に限定される。法律の改廃は、それ自体が立法行為であり、最高裁の判決が法律の改廃(消極的立法)の効力を持つとすれば、国会が唯一の立法機関であると定める憲法41条の趣旨に反するから。 読本(初版)323頁
法令違憲判決の効力(一般的効力説) 当該法令自体が違憲無効となり、いわば法令集から削除されることになる。 読本(初版)323頁
☆☆ 適用違憲 法令自体は合憲でも、それが当該事件の当事者に適用される限度において違憲である、という違憲判断の方法。法令の適用を受ける当該事案における行為そのものに焦点を当て、それが憲法上の保護の枠内であるのに法令は禁圧しようとしている場合、当該法令の適用を違憲とする手法である。 芦部(第6版)387頁、読本(初版)323頁
☆☆ 適用違憲判決の三つの類型 ①法令の合憲限定解釈が不可能である場合、すなわち合憲的に適用できる部分と違憲的に適用される可能性のある部分とが不可分の関係にある場合に、違憲的適用の場合をも含むような広い解釈に基づいて法令を当該事件に適用するのは違憲である、という趣旨の判決。法令の一部違憲と実質的に区別し難い程に類似するが、法令の有効性が全面的に維持されている点からいえば、純粋な法令の一部違憲ではない、といえる。②法令の合憲限定解釈が可能であるにも関わらず、法令の執行者が合憲的適用の場合に限定する解釈を行わず、違憲的に適用した、その適用行為は違憲である、という趣旨の判決。③法令そのものは合憲でも、その執行者が人権を侵害するような形で解釈適用した場合に、その解釈適用行為が違憲である、という趣旨の判決。 芦部(第6版)387頁
☆☆ 事情判決の法理 議員定数不均衡訴訟においては、一票の重みの較差が許容限度を超え、合理的期間の徒過もあったとき、定数配分規定は違憲とするものの、それに基づいて行われた選挙は無効としない、という判例法理。 読本(初版)324頁
将来効的無効判決 公職選挙法上の規定は違憲であり、この規定に基づいて行われた選挙は判決後一定期間経過後に、つまり将来のある時点から無効にする、という手法。事情判決の法理と比べて、国会による法律改正作業をより強く促す意味を持つ。 読本(初版)324頁
☆☆ 「主文」 判決の結論。民事訴訟であれば原告の請求を認容するかどうか、刑事訴訟であれば被告人は有罪か無罪かを示すもの。 読本(初版)311頁
☆☆ 「判決理由」(レイシオ・デシデンダイ) 判決の結論を導くうえで意味のある法的理由付け。主文の判断を導くに至った前提をなす事実、争点、法の適用を示し、かつ、判断の経路を明らかにするものである。 芦部(第6版)391頁、読本(初版)311頁
☆☆ 「傍論」(オビタ・ディクタム) 判決文中、「判決理由」と関係のない部分 芦部(第6版)391頁

 

 

☆☆ 憲法保障 憲法より下位の法形式である法律等や、政府機関のその他の活動によって、国の最高法規である憲法規範の意味内容が変更・侵害されることを事前に予防し、または事後に是正して憲法秩序の存続と安定を保つこと 渋谷「論じ方(第2版)」324頁
抵抗権 政府が重大な憲法違反をなした場合、私人が人間の尊厳を確保するための合法的抵抗手段が尽きたときに実定法上の義務を拒否する権利。人民は、服従の義務を免れ、新しい政府を樹立できる。 渋谷「論じ方(第2版)」172頁、326頁
国家緊急権 戦争・内乱など平時の統治機構によって対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために政府が憲法をはじめとする法的制約、つまり立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限 渋谷「論じ方(第2版)」327頁
抽象的違憲審査 特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な争訟と関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式をいう(この場合の対義語は付随的違憲審査)。ただし、(司法権の行使に付随するか、独立して行使されるか、という観点を捨象し、)一般的・抽象的に法規範そのものを直接対象として行われる違憲審査を指す、とする説もある(この場合の対義語は具体的違憲審査)。 渋谷「論じ方(第2版)」333頁
付随的違憲審査 通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として事件の解決に必要な限度で、適用法条の違憲審査を行う方式をいう(この場合の対義語は抽象的違憲審査)。ただし、(具体的事件の処理を直接対象とするか、という観点を捨象し、)司法権に付随して行われる違憲審査を指す、とする説もある(この場合の対義語は独立的違憲審査)。 渋谷「論じ方(第2版)」333頁
☆☆ 抽象的違憲審査の可否(判例) 「裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。けだし最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては最高裁判所と下級裁判所との間に異なるところはない」として否定した(警察予備隊違憲訴訟判決)。ただし、それに続けて「わが現行の制度の下においては」という留保や、「憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」等と述べており、法律を制定すれば抽象的違憲審査制を採用することも可能であるという解釈の余地を残した。 渋谷「論じ方(第2版)」331頁、332頁
具体的規範統制 具体的事件を契機として憲法裁判所が憲法問題についての移送を受けてその事件に関連する法令の合憲性を直接審査の対象とするドイツの制度。抽象的・付随的違憲審査である。 渋谷「論じ方(第2版)」333頁
抽象的規範統制 連邦議員などの申立てに基づいて法令の合憲性を審査するドイツの制度。抽象的・独立的違憲審査である。 渋谷「論じ方(第2版)」333頁
憲法訴願 自己の基本権侵害を主張する個人による提訴などを認めるドイツの制度。具体的・付随的違憲審査である。 渋谷「論じ方(第2版)」333頁
憲法訴訟における当事者適格 憲法上の争点を裁判所に提出する資格をもつか否かに関する「主張の利益」レベルの問題で、諸々の訴訟要件を満たす訴訟において裁判所が本案審理をなす際の、憲法上の争点の取捨に関わり、憲法問題の実体判断に関する諸要件の一角を構成する 渋谷「論じ方(第2版)」337頁
☆☆ 第三者の憲法上の権利の援用の可否(通説) 現実の特定第三者と不特定の仮定的第三者に分けたうえで、前者については、①違憲の主張をする当事者と第三者との関係、②第三者が別の訴訟で違憲性を主張することの可能性から可否を判断し、後者については、表現の自由に対する漠然・不明確あるいは過度に広汎な法律による制約や、犯罪構成要件が不明確な場合を例外として、第三者の権利の援用を認めない、とする。 渋谷「論じ方(第2版)」340頁、小山「作法(第3版)」219頁
★★★ 統治行為論(判例) 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は憲法判断の対象から除外されるとする理論。「三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約」として説明される(苫米地事件判決)。 渋谷「論じ方(第2版)」350頁、小山「作法(第3版)」221頁
☆☆ 自律権論(判例) 政治部門の内部的自律の尊重という観点から裁判所の審査が及ばない、とされているもの(警察法改正事件判決参照)。ただし、政治部門といっても様々であるが、司法権の限界としての自律権論は、国会の両議院及び内閣という憲法機関に限定されるべきで、地方議会については部分社会論が問題となり得るにとどまる、とする見解が有力である。 小山「作法(第3版)」222頁
★★★ 合憲限定解釈 ある法令の規定に複数の解釈の可能性がある場合、そのうちで憲法に最もよく適合する解釈を選択すべし、という解釈手法 小山「作法(第3版)」62頁、248頁、250頁
☆☆ 合憲限定解釈の限界(判例) ①その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合であること。②一般国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読み取ることが出来るものであること(税関検査事件判決)。 小山「作法(第3版)」252頁
★★★ (狭義の)適用違憲 法令が当該事件に適用される限りにおいて違憲と評価する違憲判決の手法。なお、適用違憲には広義と狭義があり、広義の適用違憲は法令違憲と対になり、狭義の適用違憲は合憲限定解釈と対になる。 小山「作法(第3版)」238頁、248頁、257頁
☆☆ 違憲判断の手法の分類(佐藤幸治) ①合憲限定解釈が可能であるにもかかわらず、限定解釈をせずに法令を適用したことに対して、その適用行為を違憲とする場合。②合憲限定解釈が不可能な場合に、《その法令を本件に適用した限りにおいて違憲である》とするもの。③法令そのものの合憲性には疑問はないが、その解釈・適用の仕方が憲法に抵触する場合。④法令そのものの合憲性に疑問はないが、その法令を実施する手続が問題となる場合(第三者所有物没収事件など)。⑤端的に当該処分等の具体的行為の違憲性が問題となるもの(愛媛玉串料事件判決など)。 小山「作法(第3版)」239頁
処分違憲 一部の論者が用いる用語法で、端的に当該処分等の具体的行為の違憲性を問題とするものをいう。愛媛玉串料事件判決や空知太神社事件判決などが例として挙げられる。 小山「作法(第3版)」239頁
運用違憲 法令自体は合憲としたうえで、その運用の仕組み自体に違憲性を見出す手法である。この手法をとった最高裁判例は存在しないが、裁判例では、第2次家永教科書検定訴訟第1審判決が挙げられる。 小山「作法(第3版)」241頁
☆☆ 法令違憲を主張せざるを得ない局面 ①法令の要件・効果の定めが詳細・厳密で、柔軟な解釈の余地に乏しく、具体的な不利益処分等が自動的に帰結される場合、②法令に十分な解釈の余地があるとしても、Xが法令の禁止する典型的行為を行った場合には、法令それ自体を違憲として排除しない限り、Xは不利益処分等を免れることが出来ない。 小山「作法(第3版)」241頁、242頁
☆☆ 「事情の変化」論(判例) 時の経過によって社会情勢等が変化し、立法当時には認められていた合理性が失われるに至った、という議論。相当程度に広い裁量が立法者に認められる場合に、裁量の逸脱・濫用統制の一手法として持ち出される。近年、これを援用する最高裁判例が目立っている(在外国民選挙権違憲判決、国籍法違憲判決、再婚禁止期間違憲判決など)。 小山「作法(第3版)」260頁、264頁
★★★ 比例原則 ドイツで警察比例の原則として誕生し、やがて行政法の一般的原則となったが、戦後、憲法上の法原則として、基本権制限立法の審査に用いられるようになったもの。①手段の適合性、②手段の必要性、③利益の均衡(狭義の比例性)という3つの審査を内容とする 小山「作法(第3版)」70頁
「目的審査および比例性審査」 規制目的に正当性・相応の重要性があるかどうか、これが認められた場合に、①規制手段が適合的であり、②かつ必要であるか、③規制により得られる利益と失われる基本権的利益が均衡しているかを審査する。 小山「作法(第3版)」65頁
★★★ 審査密度 どれだけ厳格に違憲審査するのか、という違憲審査の要素で、明白な誤りがない限り立法府の判断を尊重するという緩やかな審査から、裁判所自身が手段の必要性・合理性の厳密な検証を行うという厳格な審査まで、いくつかの段階に分かれる 小山「作法(第3版)」65頁
☆☆ 目的審査の意義 「公共の福祉」を狭く解することにより憲法上の権利に対する制限をミニマムにするための中心的審査という積極的な意味合いのものではなく、恣意的な目的や憲法に適合しない目的、基本権の意義及び制限の重大性に見合わない目的による基本権制限を阻止するという消極的側面に、その意義がある 小山「作法(第3版)」68頁
“je-desto”公式 AであればあるほどBでなければならない、という意味のドイツ語。これは、《憲法上の権利に対する制限が重大であればあるほど、その制限を正当化する公益は重要でなければならない》、《憲法上の権利に対する制限が重大であればあるほど、その制限を正当化する公益に対する危険が差し迫っていなければならない》というもの 小山「作法(第3版)」68頁
行為規範としての比例原則 立法者(および行政庁)を名宛人とし、立法者等に対して、相互に対立する利益の最適な(パレート最適な)調整を命じるもの。 小山「作法(第3版)」70頁
統制規範としての比例原則 立法者等が選択した手段が憲法上の権利・自由を過剰に制限しないかどうかを裁判所が審査する際に、裁判所が物差しとして用いるもの。 小山「作法(第3版)」70頁
☆☆ 手段の適合性審査 その手段が立法目的(規制目的)の実現を促進する場合に肯定され、その手段が立法目的の実現を阻害するか、目的の実現を促進する作用を持たない場合には、否定される。立法目的の完全な実現までは要求されない。 小山「作法(第3版)」70頁
☆☆ 手段の必要性審査 立法目的の実現に対して等しく効果的であるが、基本権を制限する程度が低い他の手段が存在する場合に否定される。より制限的でない他の選びうる手段の有無が審査される。重要なのは、他の手段が等しく効果的でなければならないということであり、立法目的達成度が明らかに低い手段は、代替手段の候補とはならない。 小山「作法(第3版)」70頁
☆☆ 狭義の比例性審査 「手段は追求される目的との比例を失してはならない」、あるいは、「手段は追求される目的と適切な比例関係になければならない」という要請。具体的には、憲法上の権利に対する制限の強度・発生し得る損害の重大性・危険発生の蓋然性という3変数間の均衡を求めるもの。 小山「作法(第3版)」71頁
★★★ (最高裁の)違憲審査の審査密度の定式化 重要な権利に対する強力な制限であれば、特段の事情がない限り、比例原則が厳格に適用される。この定式から外れるものは、審査基準が緩和される。 小山「作法(第3版)」73頁、74頁
★★★ 厳格な合理性の審査 重要な公益の保護が目的であること、手段が単に適合的なだけではなく、他の手段との比較において、必要であることが要求される(薬事法違憲判決)。この審査は、手段審査が厳格に行われている点で、LRA(より制限的でない他の選びうる手段)の基準と観点において異ならない。 小山「作法(第3版)」77頁
★★★ 明らかな差し迫った危険の基準 比例原則のうちの狭義の比例性に特化した審査。「人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる」「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」(泉佐野市民会館事件判決)か否かを問うもの。この基準が、アメリカの判例法理として紹介される「明白かつ現在の危険」の基準と同じかどうかについては、議論がある。また、厳格な合理性の審査とは、審査密度が異なるのではなく、審査の観点(他の手段と比較するか、特定の手段を固定するか)が異なる、と整理できる。 小山「作法(第3版)」78頁、79頁
★★★ 合理的関連性の基準 「禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の3点から」(猿払事件判決)判断するもの。ここで言う「関連性」は、手段が立法目的の実現を促進しうること(手段の適合性をクリアすること)のみを要求するものであり、より緩やかな手段で立法目的を達成できるか(手段の必要性)は審査されない。さらに、立法目的の実現を促進しうる事の論証は、観念的なもので足りる。 小山「作法(第3版)」80頁
★★★ 明白の基準(明白の原則) 規制が「著しく不合理であることの明白である場合に限って」違憲と判断するもの(小売市場事件判決)。 小山「作法(第3版)」81頁
☆☆ 立法裁量強調型の制度準拠審査 制度形成に関する広範な立法裁量が前面に出て、極めて緩やかな基準で審査される。生存権や選挙権のように、実体的権利が立法による具体化に依存するものについて、当該実体的権利との関係においては、この制度準拠審査(あるいは、この審査と表裏の関係にある立法裁量縮減型の制度準拠審査)を用いる事に合理性が認められる。 小山「作法(第3版)」175頁、184頁
☆☆ 立法裁量縮減型の制度準拠審査 制度形成に関する立法裁量を前提とするものの、立法者による第一次的判断権の行使を受けて、立法者の基本決定との首尾一貫性を検証するという形で、合理性について比較的詳細・具体的に審査される。また、強調型を用いるべきか、縮減型を用いるべきかは、個別事案の原告Xが、本来は立法者の設定した制度の趣旨・目的の内にあるはずの者であれば縮減型を用い、元々その外にある者であれば強調型を用いるべきことになる。 小山「作法(第3版)」175頁、185頁、187頁
☆☆ 裁量過程統制型審査 制度形成に関する立法裁量の存在を前提とするものの、裁量権行使の結果(=立法者の結論)ではなく、裁量権行使の過程に着目して、「当然考慮に入れるべき事項を考慮に入れず、又は考慮すべきでない事項を考慮し、又はさほど重視すべきではない事項に過大の比重を置いた判断がなされてはいないか」等、結論に至るまでの裁量権行使の態様を審査する。立法者に対する行為規範としての平等原則と結びついている。 小山「作法(第3版)」175頁、183頁、185頁
☆☆ 立法裁量限定型審査 制度形成に関する立法裁量の存在を前提とするものの、法の下の平等を持ち出して、立法裁量に対して外から限定を加える審査。立法者が選択・形成した制度は、平等との関連で合理性が認められない限り、違憲となる。当該制度の形成に際して立法者が本来、広い裁量を持っているという事情は、平等の合憲性審査において考慮されない。審査密度は、法の下の平等の論理から決定される。ここでは、審査規範としての平等原則があらわれている。 小山「作法(第3版)」175頁、181頁、185頁
明白性の統制 立法裁量に対するドイツの審査の一つ。最も審査密度が薄い。手段の必要性について、他のいずれの手段も裁判所が立法者にその採用を明示しうるほど「明白に」、より制限的でない代替手段の条件を満たしているか否かで判断する審査。 小山「作法(第3版)」186頁
厳格な内容統制 立法裁量に対するドイツの審査の一つ。最も審査密度が濃い。連邦憲法裁判所が統計的データや他国の経験に基づいて独自の予測を形成し、自己の予測と対比して立法者の予測を統制する形で判断する審査。 小山「作法(第3版)」186頁
主張可能性の統制 立法裁量に対するドイツの審査の一つ。中間的審査密度。予測の内容ではなく、法律の制定過程の適切さに着目する審査。 小山「作法(第3版)」186頁