経済的自由関係の定義集

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【経済的自由】

 

〔職業選択の自由・居住移転の自由22条〕

 

☆☆ 職業の意義(判例) 職業は、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己の持つ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有する。 読本(初版)168頁
☆☆ 経済的自由権 職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権の総称。封建的な拘束を排して、近代市民階級が自由な経済活動を行うために主張された権利。 芦部(第6版)224頁
☆☆ 職業選択の自由 自己の従事する職業を決定する自由。営業の自由もこれに含まれる(通説)。 芦部(第6版)224頁
☆☆ 営業の自由 自己の選択した職業を遂行する自由 芦部(第6版)224頁
営業の自由の性質(通説) 職業遂行の自由に含まれるものとして、憲法22条1項により人権として保障される 読本(初版)169頁
営業の自由の性質(「公序」説) 営業の自由は「国家からの自由」としての人権ではなく、近代国家が初期独占を解体して押し付けた公序、すなわち「国家による社会的独占からの自由」である 読本(初版)169頁
営業の自由の性質(有力説) 営業の自由を、「開業の自由、営業の維持・存続の自由、廃業の自由」を内容とする狭義の「営業をすることの自由」と、「営業活動の自由」に区別し、前者は22条1項により保障され、後者は財産権行使の自由として29条の財産権により保障される。前者は人格的関連性が強く、制限については慎重な配慮を要するが、後者は資本財の自由な行使を意味するに過ぎず、大幅な制限を許容する。 読本(初版)169頁
★★★ 規制目的二分論 経済活動の自由の規制目的を、消極国家における規制目的、すなわち国民の生命及び健康に対する危険の防止や最低限の秩序維持の目的と、積極国家において登場した規制目的、すなわち積極的な社会経済政策目的に二分して、それぞれ厳格度の異なる審査基準を適用する、という理論 読本(初版)169頁
★★★ 消極目的規制 主として国民の生命および健康に対する危険を防止もしくは除去ないし緩和するために課せられる規制 芦部(第6版)225頁
★★★ 積極目的規制 福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、とくに社会的・経済的弱者を保護するためになされる規制であり、社会・経済政策の一環としてとられる規制 芦部(第6版)225頁
★★★ 警察比例の原則 規制措置は、社会公共に対する障害の大きさに比例したもので、規制の目的を達成するために必要な最小限度にとどまらなくてはならないという原則 芦部(第6版)225頁
★★★ 合理性の基準 立法目的および立法目的達成手段の双方について、一般人を基準にして合理性が認められるかどうかを審査するもの 芦部(第6版)226頁
★★★ 厳格な合理性の基準 裁判所が規制の必要性・合理性および「同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段」の有無を立法事実(立法の必要性・合理性を支える社会的・経済的な事実)に基づいて審査する基準(薬事法違憲判決)。消極目的規制の審査に用いられる。 芦部(第6版)226頁、読本(初版)170頁
★★★ 明白の原則 「当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とする」という審査方法(小売市場判決)。積極目的規制の審査に用いられる。 芦部(第6版)226頁、読本(初版)170頁
☆☆ 居住・移転の自由 自己の住所または居所を自由に決定し、移動することができる自由。旅行の自由を含む。 芦部(第6版)230頁
☆☆ 海外旅行の自由の保障根拠条項(判例、多数説) 外国への移住に類似するものとして、22条2項によって保障されている(帆足計事件判決) 芦部(第6版)231頁、読本(初版)189頁

 

〔財産権29条〕

 

 

「財産権」(29条1項、通説) 財産権的価値を有する全ての権利。所有権その他の物権、債権のほか、著作権・漁業権等の特別法上の権利も含む。 読本(初版)178頁
☆☆ 憲法29条1項の財産権保障の意味(通説) 個人の現に有する具体的な財産上の権利の保障(現状保障)と、個人が財産権を享有しうる法制度つまり私有財産制の保障(制度保障)、という二つの面を有する。 芦部(第6版)233頁、読本(初版)178頁
☆☆ 私有財産制の核心(多数説) 生産手段の私有制。この立場からは、生産手段の私有を否定する社会主義への移行は、憲法改正を必要とする。 芦部(第6版)234頁、読本(初版)178頁
私有財産制の核心(有力説) 人間が人間たるに値する生活を営むうえで必要な物的手段(生活財)の享有。この立場からは、社会主義への移行は、憲法改正を必要としない。 芦部(第6版)234頁、読本(初版)178頁
財産権規制の法的根拠(有力説) 「内容」と「行使」を区別し、財産権の「内容」は憲法29条2項により制限され、財産権の「行使」は13条により制限される 読本(初版)180頁
財産権規制の法的根拠(通説) 財産権の「内容」と財産権の「行使」との区別は相対的であることから、これらを区別せず、財産権規制の法的根拠を一律に29条2項に求める 読本(初版)180頁
法制度保障論 伝統的な私法上の法制度を、立法による改変から保護するべく、憲法により保障する、と捉える理論 読本(初版)183頁
ベースライン論 当該社会の制度イメージに立脚した法律家集団の共通了解としての標準的な制度形態をベースラインとし、そこから乖離する場合は、必要性と合理性が求められる、という理論 読本(初版)183頁
☆☆ 憲法29条2項の「公共の福祉」 各人の権利の公平な保障をねらいとする自由国家的公共の福祉のみならず、各人の人間的な生存の確保を目指す社会国家的公共の福祉をも意味する 芦部(第6版)234頁
☆☆ 「公共のため」 公共事業のためだけでなく、特定の個人が受益者となる場合でも、収用全体の目的が広く社会公共の利益のためであればよい 芦部(第6版)238頁、読本(初版)185頁
☆☆ 「用ひる」 強制的に財産権を制限したり収用したりすること 芦部(第6版)238頁
財産権規制の補償の要否(特別犠牲説、通説) 損失補償の根拠を社会全体の負担の公平化に求める立場から、公用収用に限らず、財産権規制の場合でも「特別の犠牲」にあたる場合には補償が必要、とする 読本(初版)184頁
財産権規制の補償の要否(分離説) 消極規制の場合は、社会的な害悪をもたらす財産権行使を規制するのであるから、そもそも補償は不要であるし、積極規制の場合も、社会国家による財の再分配においては、補償を要するとすると規制が無意味となることから、いずれにせよ、2項による規制には3項による補償は不要である、とする 読本(初版)184頁
☆☆ 補償が必要とされる特別の犠牲の射程(形式・実質2要件説、通説) ①侵害行為の対象が広く一般人か、特定の個人ないし集団か、という形式的要件、②侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度内であるか、それを超えて財産権の本質的内容を侵すほど強度なものであるか、という実質的要件の二つを総合的に考慮して判断する。 芦部(第6版)238頁、読本(初版)184頁
補償が必要とされる特別の犠牲の射程(実質要件説) ①財産権の剥奪ないし当該財産権の本来の効用の発揮を妨げることとなるような侵害については、権利者の側にこれを受忍すべき理由がある場合でないかぎり、当然に補償を要する。②その程度に至らない規制については、(1)当該財産権の規制が社会的共同生活との調和を保っていくために必要とされるものである場合には、財産権に内在する社会的拘束の表われとして補償は不要、(2)他の特定の公益目的のため当該財産権の本来の社会的効用とは無関係に偶然に課せられるものである場合には補償が必要、とする。 芦部(第6版)238頁、読本(初版)185頁
「正当な補償」(完全補償説) 当該財産の客観的な市場価値を全額補償すべき、とする。つまり、収用的侵害の前後を通じて財産価値に変動を生じさせない事を要請する。なお、収用される財産の市場価格のほか、移転料や営業上の損失等の付帯的損失も含まれる。 芦部(第6版)240頁、読本(初版)185頁
「正当な補償」(相当補償説) 当該財産について、その当時の経済状態において成立することが考えられる価格に基づき、合理的に算出された相当な額を補償すれば足りる、とする。必ずしも市場価格と完全に一致する事を要しない。 芦部(第6版)240頁、読本(初版)185頁
補償規定を欠く法律の効力(判例・通説) 私人の裁判的救済を理由に、憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求しうるため、上記法令の効力を維持する(河川附近地制限令事件判決。ただし傍論)。 読本(初版)186頁
補償規定を欠く法律の効力(違憲無効説) 補償規定を欠く法令の効力は無効、とする 読本(初版)186頁
国家補償の谷間 損失補償制度は、国の「適法」行為により「私有財産」が侵害された場合の救済を定めたもので、他方、国家賠償制度は、国の「違法」(かつ、故意又は過失の)行為により「権利・利益」が侵害された場合の救済を定めたものである。これらの制度によりカバーされないものは「国家補償の谷間」と称されている。 読本(初版)187頁

 

 

 

☆☆ 「職業」(22条1項) 社会的活動の中でも、生計を維持するための経済的活動 渋谷「論じ方(第2版)」170頁
☆☆ 営業の自由(有力説) 職業遂行の自由を意味する 渋谷「論じ方(第2版)」171頁
営業の自由(渋谷説) 職業の選択・遂行活動のうち自己の計算に基づいて行われる営利追求を目的として行われる活動の自由を意味する 渋谷「論じ方(第2版)」171頁
☆☆ 許可 本来は私人が自由になしうる活動であるが、放任すると害悪をもたらす可能性があるものについて、いったんこれを一般的に禁止し、所定の要件を満たす者に対して個別的に禁止を解除する命令的行為 小山「作法(第3版)」193頁
☆☆ 特許 社会公共の利益のために本来は国がなすべき事業を一定の設備・能力を備えた私人に行わせるものであり、特定人のために排他的営業権を設定する形成的行為 小山「作法(第3版)」193頁
職業の自由に対する規制の3段階 緩やかな順から、①職業遂行に対する制限、②職業開始に対して特定の資格等を要求する許可の「主観的」要件による制限、③当人の資格・能力と関わりの無い「客観的」要件による制限の3段階(ドイツの薬局判決)。比例性は、どの「段階」の規制手段を選択すべきかについて要求されるのみならず、それぞれの「段階」における具体的規制手段についても要求される。 小山「作法(第3版)」78頁
☆☆ 29条の補償の要否(2項・3項分離説・通説) 3項は特定の個人の財産権に特別の犠牲を加える場合に補償する旨の規定で、これ以外の場合の財産権制約は2項の問題であり補償を要しない、とする考え方。憲法上補償を要する場合の判定基準に関する形式・実質二要件説につながる。 渋谷「論じ方(第2版)」187頁
29条の補償の要否(2項・3項結合説) 1項が個人の財産権を保障している以上、いかなる制限を財産に加えようと補償は一切不要とするのは問題で、補償を要する場合もある、と解する考え方。憲法上補償を要する場合の判定基準に関する実質的要件説につながる。 渋谷「論じ方(第2版)」187頁