精神的自由の中でも内心の自由関係の定義集

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【精神的自由権(内心の自由)】

 

〔思想・良心の自由19条〕

 

「たたかう民主政治」の立場 自由で民主的な基本秩序に反する思想等に対しては、表現の自由など基本権を喪失せしめる、という立場。ドイツ連邦共和国基本法18条がこの立場に立つ。 読本(初版)110頁
★★★ 「思想及び良心」(19条) 世界観、人生観、主義、主張などの個人の人格的な内面的精神作用を広く含むもの。「良心」は「思想」のうち倫理性の強いものを意味するに過ぎず、ともに憲法上同等に保障されている以上、「思想」と「良心」を特に区別して理解する必要はない。 芦部(第6版)150頁
☆☆ 思想・良心の自由の保障領域(内心説) 心の自由を広く保障する趣旨から、個人の内心一般を広く保障するもの、と解する 読本(初版)110頁
☆☆ 思想・良心の自由の保障領域(信条説) 信教の自由や学問の自由がともに体系的なものに関わっていることと軌を一にすべきことから、個人の人生観、世界観、思想体系など、人格形成に関わる部分に限定して保障している、と解する 読本(初版)110頁
☆☆ 沈黙の自由 個人がいかなる思想を抱いているかについて、国家権力により露顕を強制されない自由 芦部(第6版)150頁

〔信教の自由20条〕

 

☆☆ 「信教の自由」(20条) 信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由の三つを含む。そして、憲法が人々に対してこれらの自由を権利として保障すると同時に、権利を侵害しないよう公権力に対して命ずるもの。 芦部(第6版)155頁、読本(初版)116頁
☆☆ 信仰の自由 宗教を信仰し、または信仰しないこと、信仰する宗教を選択し、または変更することについて、個人が任意に決定する自由 芦部(第6版)155頁、読本(初版)117頁
宗教的行為の自由 信仰に関して個人が単独で、または他の者と共同して宗教上の祝典、儀式、行事その他布教等を任意に行う自由。宗教的行為をする自由のみならず宗教的行為をしない自由をも保障する。 芦部(第6版)156頁、読本(初版)117頁
宗教的結社の自由 特定の宗教を宣伝しまたは共同で宗教的行為を行うことを目的とする団体を結成する自由。結社に加わる自由のみならず結社に加わらない自由をも保障する。 芦部(第6版)156頁、読本(初版)117頁
☆☆ 政教分離原則 宗教とのかかわり合いを持たないよう、公権力に対して要請する客観的原則 読本(初版)116頁
政教分離の程度(完全分離説) 国家と宗教は完全に分離されるべきであり、例外はあるとしても、それは平等や信教の自由の保障など憲法上の価値に基づいて、政教分離原則に譲歩を求めうる場合に限られる 読本(初版)125頁
☆☆ 政教分離の程度(限定分離説、判例) 政教分離原則自体がそもそも限定的なものであり、国家と宗教との完全な分離までは求めていない 読本(初版)125頁
信教の自由への規制の類型分け 当該宗教を狙いうちにして規制する場合(狙いうち規制)と、規制ないし措置としては宗教中立的で一般的に適用されるものであっても、それが特定の宗教の信者にとりわけ重い負担となる場合(一般的・中立的規制)とに分けられる。 読本(初版)119頁
「宗教」(20条1項前段、2項、広義) 超自然的、超人間的本質の存在を確信し、畏敬崇拝する信条と行為 芦部(第6版)156頁
「宗教」(20条3項、狭義) 何らかの固有の教義体系を備えた組織的背景を持つもの 芦部(第6版)156頁
宗教上の人格権 静謐な宗教的環境の下で自らの信仰、宗教的行為をなす利益。最高裁は、宗教上の人格権を認めていない(自衛官合祀拒否訴訟判決)。 読本(初版)123頁
アメリカの目的効果基準(レーモン・テスト) ①問題となった国家行為が、世俗的目的をもつものかどうか、②その行為の主要な効果が、宗教を振興し、または抑圧するものかどうか、③その行為が、宗教との過度のかかわり合いを促すものかどうか、という三要件を個別に検討することによって、政教分離原則違反の有無を判断し、一つの要件でもクリアできなければ、右行為を違憲とする基準 芦部(第6版)161頁、読本(初版)126頁
★★★ 目的効果基準 行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為か否かを違憲の判断基準とする考え方(津地鎮祭事件判決)。(その判断は、当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法が宗教の定める方式に則ったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的および宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断すべき) 芦部(第6版)162頁、読本(初版)126頁
エンドースメント・テスト(「是認」の基準) レーモン・テスト(アメリカにおける目的効果基準)をやや緩和・精緻化し、目的審査においては、「政府の実際の目的が宗教を是認または否認するメッセージを伝えることを意図したかどうかを明らかにする」ことが必要とされ、効果審査においては、「政府の実際の目的にかかわりなく、審査に付されている行為が事実上、宗教を是認または否認する効果をもつものかどうかを問う」という内容の審査。いずれか一方の点について答えが積極的であれば、政府の行為は違憲となる。 芦部(第6版)167頁、読本(初版)126頁
是認 特定宗教の信奉者でない者に、政治的共同体の部外者であり正規の構成員でないというメッセージを伝えること、それに付随して、右宗教の信奉者には、政治的共同体の部内者であり厚遇される構成員であるというメッセージを伝えること 芦部(第6版)167頁
☆☆ 特権(20条1項) 他の宗教団体に比べて、あるいは一般の国民・団体に比べて、特別な利益 芦部(第6版)159頁
☆☆ 政治上の権力(20条1項) 立法権・課税権などの統治的権力 芦部(第6版)160頁
★★★ 宗教的活動(20条3項) 行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為 芦部(第6版)162頁

〔学問の自由23条〕

 

 

学問の自由の内容 ①学問研究の自由、②研究発表の自由、③教授の自由の三つ 芦部(第6版)168頁
☆☆ 学問の自由の趣旨(判例) 一面において、広くすべての国民に対して学問的研究とその研究結果の発表の自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することに鑑みて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨とする(東大ポポロ事件判決) 読本(初版)162頁
☆☆ 大学の自治 大学における研究教育の自由を十分に保障するために、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするもの 芦部(第6版)171頁

 

 

 

「思想及び良心」(19条、内心説) 内心における考え方ないし見方。ものの見方・考え方の根本的な基準である「信条」のみならず、(「信条」よりは心の中核から離れている)理性的・道徳的・感情的判断等の「心のあり方・内心」をも含む、とする。 渋谷「論じ方(第2版)」110頁、194頁、195頁
☆☆ 「思想及び良心」(19条、信条説) 世界観、人生観など個人の人格形成の核心的部分。ものの見方・考え方の根本的な基準であり、憲法14条の「信条」と同義である。 渋谷「論じ方(第2版)」110頁、194頁、195頁
「学問」(23条) 内容および形式からみて、真理の探究のための真摯で計画的な試みと考えられるものすべて 渋谷「論じ方(第2版)」118頁
☆☆ 「信教の自由」における「宗教」 超自然的、超人間的本質の存在を確信し、畏敬崇拝する信条と行為、と広く捉えられている。 渋谷「論じ方(第2版)」213頁
☆☆ 「政教分離原則」における「宗教」 何らかの固有の教義体系を備えた組織的背景をもつもの、と狭く捉えられている。政教分離の前提として、分離が要請される対象が明確でなければならず、宗教活動の主体である宗教団体か、体系化された教義をもつ宗教である必要があるから。 渋谷「論じ方(第2版)」213頁
是認のテスト 特定宗教の信者以外の者にその政治共同体の部外者であるというメッセージを伝え、付随的にその信者に対してその共同体の部内者で、厚遇されているというメッセージを伝えるか否か、というテスト 渋谷「論じ方(第2版)」214頁
★★★ 制度的保障論 憲法には個人の主観的権利を保障する規定のほかに、客観的制度を保障する規定がある、と解する理論。個人的権利、とくに自由権と異なる一定の制度に対して、立法によってもその核心ないし本質的内容を侵害することができない特別の保護を与え、当該制度それ自体を客観的に保障していると解される場合をいう。特徴としては、①私法的な制度の保障と公法的な制度の保障の両方を含むこと、②歴史的・伝統的に形成された既存の制度の核心の保障であること、③制度は原則として自由と峻別されること、の3点が挙げられる。 渋谷「論じ方(第2版)」186頁、小山「作法(第3版)」145頁
☆☆ 制度忌避 (憲法が特定の制度を望ましいと考え、その制度を憲法による保障の対象に取り込む場合である制度(的)保障とは異なり、)憲法が特定の制度を忌避し、そのような制度を禁止する場合をいう 小山「作法(第3版)」148頁
★★★ 政教分離(制度的保障説、判例) 「政教分離は、いわゆる制度的保障の規定であって、信教の自由そのものを直接保障するものではなく、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである」(津地鎮祭事件判決) 渋谷「論じ方(第2版)」211頁、小山「作法(第3版)」148頁
政教分離(人権説) 信教の自由は、それに対する間接的な圧迫・干渉からの保障を含むと解し、政教分離に反した国家の宗教的活動は信教の自由に対する圧迫・干渉であるため、同時に、主観的権利としての信教の自由に対する侵害でもある、とする考え方 小山「作法(第3版)」148頁
☆☆ 政教分離(客観法上の保障説) 政教分離条項は、14条2項や21条2項と同じく、「……してはならない」という規定であり、そこには、保護すべき一定の制度は存在しない。表現の自由が検閲を忌避し、法の下の平等が貴族制度を忌避するのと同じく、信教の自由が政教の癒着を忌避する関係にある、と捉える考え方。この点で、財産権が私有財産制度を要請し、婚姻の自由が家族法秩序を要請するのとは事情が異なるため、政教分離を制度保障ということはできない、とする。 小山「作法(第3版)」149頁
☆☆ 政教分離規定の法的性格と審査基準論 政教分離を制度の「核心部分」の保障(制度保障)と解せば、国家の宗教的活動を原則として許容したうえで、核心部分に相当する過度のかかわり合いだけを例外的に禁止する、との解釈に繋がり易く、目的効果基準と親和的である。政教分離を政教の癒着を忌避した憲法上の客観法的保障であると解せば、禁止を原則とし、許容を例外とすべきとの理解に繋がり、レモンテスト等の厳格な手法が要請されることになる。 小山「作法(第3版)」150頁
公法上の制度的保障 国家が最終的な責任を負うべきある「公的な任務」を国家から離れて自治的に遂行するための組織形態の保障。大学の自治や地方自治が典型例である。 小山「作法(第3版)」152頁
「法制度」保障と「制度体」保障の考え方(石川健治) 「法制度」保障は、伝統的に成立していた所有権や婚姻に関わる規範複合体を憲法に取り込むものであり、「制度体」保障は、近代憲法が解体しようとした身分制や中間団体(大学・教会など)を憲法で保障することの意味を解明するものである。 小山「作法(第3版)」152頁
大学・地方公共団体等の自治主体が有する基本権の内実 自治の保障に反した介入に対抗する防御、という意味にとどまる。従って、個別の大学・自治体の「存続」の保障は、制度的保障に含まれない。つまり、例えば特定の国公立大学を教授会の意思に反して廃止することは、大学の自治の問題ではない。 小山「作法(第3版)」153頁