憲法の概説的な部分の定義集

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【憲法概説】

 

 

国家(家族論的構成) 家族に国家の起源を求め、拡大された家族として国家を捉える見解。ここでは、君主は拡大家族の家父長として、国家構成員の上に君臨することになる。 読本(初版)4頁
国家(社会契約論的構成) 本来自由かつ平等な諸個人が、自然権の十全な保障を求めて、その自由な同意をもとに国家を形成する、と捉える見解。この見解が、近代以降の憲法の基底となる。 読本(初版)4頁
形式的意味の憲法 憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)。その内容がどのようなものであるかには関わらない。 芦部(第6版)4頁、読本(初版)6頁
実質的意味の憲法 ある特定の内容をもった法。その内実において「授権規範であり、かつ制限規範である」等の憲法の実質を有する規範。成文であると不文であるとを問わない。 芦部(第6版)4頁、読本(初版)6頁
☆☆ 固有の意味の憲法 国家統治の基本を定めた法。政治権力とそれを行使する機関の組織と作用及び相互の関係を規律する規範。いかなる時代のいかなる国家にも存在する。 芦部(第6版)4頁、読本(初版)6頁
☆☆ 立憲的意味の憲法 自由主義に基づいて定められた国家の基礎法。専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義の思想に基づく憲法。 芦部(第6版)5頁、読本(初版)6頁
近代憲法 近代資本主義の憲法的表現として、自由権中心であり、所有権の神聖不可侵を謳う憲法 読本(初版)7頁
現代憲法 資本主義の高度化、貧富の格差に対応すべく、自由権のみならず生存権等の社会権を保障する反面、経済活動の自由には制約を課し、所有権を神聖不可侵とは捉えない憲法 読本(初版)7頁
成文憲法 憲法典の条文の形式で存在する憲法 読本(初版)7頁
不文憲法 憲法典の条文の形式で存在するわけではない憲法 読本(初版)7頁
軟性憲法 通常の立法手続と同じ要件で改正できる憲法 芦部(第6版)7頁、読本(初版)7頁
硬性憲法 通常の立法手続よりも要件が加重された特別の手続によって改正しなければならない憲法 芦部(第6版)7頁、読本(初版)7頁
欽定憲法 憲法制定権力が君主にあり、従って現実に君主によって制定された憲法 芦部(第6版)7頁、読本(初版)8頁
民定憲法 憲法制定権力が国民にあり、従って現実に国民によって制定された憲法 芦部(第6版)7頁、読本(初版)8頁
協約憲法 君主と国民との合意によって制定される憲法。君主主権から国民主権への過渡期に見られた。 芦部(第6版)7頁、読本(初版)8頁
規範的憲法 政治権力が憲法規範に適応し、服従しており、憲法がそれに関係する者すべてによって遵守されている場合の憲法 芦部(第6版)9頁
名目的憲法 成文憲法典は存在するが、それが現実に規範性を発揮しないで名目的にすぎない場合の憲法 芦部(第6版)9頁
意味論的憲法 独裁国家や開発途上国家によく見られるが、憲法そのものは完全に適用されていても、実際には現実の権力保持者が自己の利益のためだけに既存の政治権力の配分を定式化したにすぎない場合の憲法 芦部(第6版)9頁
憲法制定権力 憲法を作り、憲法上の諸機関に権限を付与する権力。国民に憲法をつくる力があるという考え方は、国民主権概念を基礎づけた。 芦部(第6版)11頁
☆☆ 最高法規 国法秩序においてもっとも強い形式的効力をもつ法規。憲法98条は憲法が国の最高法規である旨を明らかにしている。 芦部(第6版)11頁
★★★ 法の支配 専断的な国家権力の支配(人の支配)を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理 芦部(第6版)13頁、読本(初版)243頁
☆☆ 法の支配の内容 ①憲法の最高法規性の観念、②権力によって侵されない個人の人権、③法の内容・手続の公正を要求する適正手続、④権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重など 芦部(第6版)14頁、読本(初版)243頁
形式的法治国家概念 戦前ドイツに見られた法治国家概念。「法」は、もっぱら国家作用が行われる形式又は手続を示すものにすぎず、内容の合理性は要件とされていない。 芦部(第6版)14頁、読本(初版)242頁
実質的法治国家概念 戦後ドイツに見られる法治国家概念。「法」内容の合理性・正当性が要件とされている。法の支配とほぼ同一の原理である。 芦部(第6版)15頁、読本(初版)243頁
自由国家(消極国家) 権力を独占する強大な国家は経済的干渉も政治的干渉も行わずに、社会の最小限度の秩序の維持と治安の確保という警察的任務のみを負うべき、とする国家観。侮蔑的な意味を込めて夜警国家とも呼ばれる。 芦部(第6版)15頁
社会国家(積極国家、福祉国家) 国家は国民の福祉の増進を図ることを使命として、社会保障制度を整備し、完全雇用政策をはじめとする各種の経済政策を推進すべき、とする国家観 芦部(第6版)16頁
★★★ 立憲主義 国家は国民生活にみだりに介入すべきではないという消極的な権力観を前提に、憲法に基づいて政治を行い、以て個人の権利・自由の保障を十全なものにしようという考え方 芦部(第6版)16頁
★★★ 法律の留保の原則 国民の権利・自由に対する制限は、行政権には許されず、立法権(法律)に留保されるべきだという、行政権の恣意を抑制する原則 芦部(第6版)20頁、読本(初版)71頁
国家法人説(天皇機関説) 国家は法的に考えると一つの法人、したがって意思を有し、権利(具体的には統治権)の主体である、と説く考え方。君主、議会、裁判所は、国家という法人の「機関」であること、国家はその機関を通じて活動し、機関の行為が国家の行為とみなされること、君主に主権が存するとは、君主が国家の最高の意思決定機関の地位をしめるということを内容とする 芦部(第6版)21頁、読本(初版)246頁
八月革命説 ポツダム宣言12項は、「国民の自由に表明せる意思」に従った政府の樹立を求めるものであるが、これを日本政府が受諾することによって、それまでの神権主義を捨てて、国民主権主義を採用する事に改めた。これは、憲法改正手続によっては為し得ない変革であったという意味で、憲法的には革命があったと理解すべき、とする説。 読本(初版)15頁

 

☆☆ 立憲主義 権力を握った者は、それを濫用する誘惑に負けてしまう危険性があるという現実認識を背景に、国の統治に関する基本的なルールを定めて、それにしたがって統治を行わねばならないということ 渋谷「論じ方(第2版)」3頁
政府 狭義では、「内閣およびその指揮下にある行政各部を含む行政府」をさす。広義では、「統治権の内容を構成する立法権・行政権・司法権をもつ組織すべて」を意味する。 渋谷「論じ方(第2版)」6頁
☆☆ 「国政」(4条1項) 憲法に規定された統治活動(立法・行政・司法)の総称 渋谷「論じ方(第2版)」8頁
国家(社会学的アプローチ・マッキーヴァー) 人間が共同生活を営む上で必要な秩序維持のために、統制と調整を行う特殊な「機能社会」<自然発生的な社会(「基礎社会」)ではなく、計画的に組織された社会>。 渋谷「論じ方(第2版)」10頁
国家(社会学法学の二元的アプローチ・イェリネク) 個々人を超えた独自の目的をもつ現実的集合的統一体として、擬制ではなく実在するもの。法学的には、権利能力の主体(国家法人説) 渋谷「論じ方(第2版)」12頁
国家(法学的アプローチ・ケルゼン) 規範秩序、法秩序そのもの。条件と結論を命令によって結合する規範の体系(法秩序説) 渋谷「論じ方(第2版)」12頁
国家の起源(家族説) 親子の同居が社会秩序の出発点であり、家族→部族→氏族→国家という段階を踏む 渋谷「論じ方(第2版)」14頁
国家の起源(実力説) 国家を力関係そのものとみる。一部族の他部族に対する、あるいは同部族内のある集団の他の集団に対する暴力的支配の成立に国家の発生をみようとする。 渋谷「論じ方(第2版)」15頁
国家の起源(契約説) 政府は自由な国民の社会契約によって組織されたという思想。直感的にも実証的にも歴史認識としてはありえないものだが、近代立憲主義の母体となった。 渋谷「論じ方(第2版)」16頁、19頁
ナシオン主権の考え方 抽象的統一体としての国民が、単一・不可分・不可譲の統治権を保有し、このような国民は自ら統治権を行使できないため、その行使を国民代表に委ねざるをえない。つまり、代表民主政に帰着する。そして、個々の国民は当然には政治参加できず、また選挙権も当然には認められるわけではないのに対して、代表者は有権者からも独立して行動できることになる(一般的委任)。 渋谷「論じ方(第2版)」46頁
プープル主権の考え方 具体的存在としての各人民が自ら統治権を所有し、その行使をする当然の権利をもつ。それ故に、直接民主政が要請される。また、仮に代表民主政を採用した場合であっても、代表者は人民の意思に拘束され人民から責任を追及される立場におかれることになる(命令的委任)。 渋谷「論じ方(第2版)」46頁
民主主義(過程説) 統治内容の決定プロセスのあり方、と解する 渋谷「論じ方(第2版)」47頁、48頁
民主主義(過程+内容説) 統治内容の決定プロセスのみならず統治内容のあり方、とりわけ人間の尊厳も含まれる、と解する 渋谷「論じ方(第2版)」47頁